探偵の尾行や調査は訴えられる?裁判や訴訟の条件、注意点を解説
この記事の目次
探偵を裁判で訴えることは出来る?
結論から言うと、基本的に探偵に尾行や張り込み、浮気調査をされても訴えることができません。
これは、探偵は「探偵業法」という法律で尾行や張り込み、浮気調査や素行調査といった各種調査を認められているためです。
「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として、面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいいます。
この探偵業務を行う営業を「探偵業」といいますが、専ら放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関の依頼を受けて、その報道の用に供する目的で行われるものは除かれます。
一般人が尾行や張り込みをすればストーカーとなり犯罪ですが、認可を受けている探偵にとって尾行や各種調査はあくまでも合法です。
ただし、調査にあたって度を超えた迷惑行為をしていたり、違法な行為があった場合は訴えることが可能となっています。
探偵を裁判で訴訟できる条件
探偵業届出証明書を出していない
「探偵業届出証明書」を提出していない探偵は、裁判で訴訟をすることが可能です。
探偵が合法的に尾行や浮気調査をできるのは、各地の公安委員会に「探偵業届出証明書」を提出し、正式に認可されているからです。
つまり、届出を出さずに調査をしている場合は探偵でなく一般人が尾行をしている扱いになるので、立派な違法行為となります。
探偵業法18条により、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金を課せられることになるでしょう。
探偵業届出証明書は探偵のホームページか、事務所内の分かりやすい所に記載する義務があるので、確認しても番号が無いようであれば提出していない可能性があります。
調査の過程で不法侵入があった
探偵は張り込みや尾行、聞き込みといった業務は許可されていますが、尾行するために勝手に他人の土地に入った場合は不法侵入となり、裁判で訴訟することが可能です。
もちろん探偵もその辺りを理解しているのでそうそう不法侵入はしませんが、もし監視カメラなどの映像があればそれを証拠に訴訟するこもできるでしょう。
調査の過程で器物破損があった
探偵が調査をする過程でカメラを設置するため壁を削った、GPSを仕掛けるため勝手に車を改造したなど、器物破損に該当する事があった場合も裁判で訴えることができます。
また、探偵は時に調査に夢中になるあまり、気づかない内に腕に物が当たったりして壊してしまうこともよくあるので、証拠さえあれば訴えることが可能でしょう。
名誉毀損に該当する行為があった
探偵の調査により名誉毀損を受けた場合も裁判で訴訟することが可能です。
例えば探偵が意図したものでないとしても、探偵により浮気が職場にバレて居づらくなった、クビになった場合は名誉毀損となります。
また、調査で得た証拠やデータを依頼者以外に公開していたことが発覚した場合も、探偵を名誉毀損で訴えることができるでしょう。
調査で過剰な尾行・張り込みがあった
探偵の尾行や張り込みは基本的に合法ですが、生活に支障が出る強引すぎる尾行や張り込みをされた場合は「つきまとい行為」となり、裁判で訴えられる可能性があります。
犯罪を助長する内容の調査だった場合
依頼主がストーカー、暴力団の依頼を引き受けたなど、犯罪行為を助長する内容の調査も裁判で訴えられます。
昔、探偵がストーカーの依頼を引き受けてしまった結果、女性が殺されてしまう事件に繋がったことがあるため、現在は探偵業法で犯罪リスクのある依頼は受けてはいけないと定められています。
そのため、本来は依頼者の目的や身分をしっかり精査する義務があるのですが、それを怠り犯罪を助長する調査を受けていた場合は裁判で訴えることが可能です。
探偵を裁判で訴える場合は民事と刑事のどちらになる?
結論から言うと、基本的に探偵を裁判で訴える場合は民事となります。
- 刑事裁判:殺人や暴行罪など刑罰を決めるケースが中心
- 民事裁判:慰謝料や治療費などを請求するケースが中心
刑事裁判は、国家機関が殺人罪や過失致死罪などを犯した犯罪者に対し、「有罪か無罪か決めたり、刑罰を下す」ための裁判です。
一方、民事裁判はお金を返さない友人や、浮気をしたパートナーに対して請求した慰謝料などの金額を決める裁判です。
探偵の調査に伴う違法行為は訴えることが可能ですが、殺人罪や強盗罪と違い、有罪判決を下して懲役刑を課すほどの物ではない事が大半でしょう。
そのため、器物破損や不法侵入に対する慰謝料を請求する「民事裁判」を行います。
刑事裁判
刑事裁判は国家が被告人に刑罰を与えるか否かを決める裁判です。
- 生命刑(死刑)
- 自由刑(懲役・禁錮・拘留)
- 財産刑(罰金・科料・没収)
上記の3種7項目から犯罪の重さに合わせて公正な手順で審理し、公平な判決を下します。
ただ民事と違い裁判に勝って有罪判決が下ったとしても罰金が国庫に入るか本人が牢屋に入るだけで慰謝料もないので、訴えた本人の溜飲が下がるだけでそれ以上のメリットはありません。
民事裁判
民事裁判は、探偵により被った被害の賠償や求めるための裁判なので、死刑や懲役といった刑罰を求める事は出来ません。
ただ刑事裁判と違って検事でない一般人でも裁判を起こすことができ、勝てば請求した慰謝料が自分の手元に入ってきます。
刑事事件と比べて勝てば実利があるという点は大きな違いと言えるでしょう。
探偵を裁判で訴える際の注意点
配偶者が動いた場合は訴えられないことがある
浮気調査の証拠として盗聴器が使われていたとしても、パートナーが探偵の指示で自分の家に盗聴器で仕掛けた場合は不法侵入には当たりません。
そのため、パートナーが自分の家に盗聴器を仕掛けた場合は訴えることもできないでしょう。
ほぼ確実に相手は弁護士を立ててくるので泥沼化しやすい
探偵を裁判で訴えても、ほぼ確実に向こうも弁護士を立ててくるので争いは泥沼、長期化しやすいです。
また、探偵は常日頃から修羅場をくぐり抜けており、一般人よりも法律知識があり、裁判や弁護士と関わった経験も豊富です。
そのため、こちらが違法行為の明確な証拠を掴んでいなければ、争いはもちろん裁判に進んだ際も不利になるでしょう。
他にも争いが長期化する過程で多額の費用がかかったり、精神的に疲れてしまうリスクもあります。
一方で探偵は表向きは伏せていても懇意にしている弁護士事務所があることが多いので、費用面での痛手も少なく、こちらは不利な状況で戦うことになるでしょう。
探偵を裁判で訴える条件まとめ
探偵の尾行や浮気調査が元で受けた被害は、探偵が違法行為にならないよう細心の注意を払っているのもあり基本的に訴えることはできません。
ただ探偵が地元の公安委員会に届出をしていなかったり、自宅や職場に忍び込んで盗聴器を仕掛けているようであれば、違法行為として訴えることが可能です。
もちろん訴える際には違法行為や犯罪があった証拠が必要となります。
そのため、探偵を裁判で訴える場合は個人で戦うのはほぼ不可能です。
こちらも探偵を雇って証拠を調査をするか、弁護士に依頼をすると良いでしょう。
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